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【エッセイ】ブレイディみかこ「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」-次から次へと問題が起こる、そこは英国の元・底辺中学校!

 まずはタイトルがいい。これはブレイディさんの息子が自分のノートに落書きした言葉で、ラストではその真意も語られるが、このタイトルだけで強く惹きつけられる。さらに、黄色の表紙とそこに描かれた中田いくみのイラストがいい。もう少し言うならばブレイディみかこという著者の名前もなんだかいい。そんないいが重なって、これは本屋に並んだ時点ですでに気になる一冊になった。

 

 ロンドンの保育所で保育士として働きながらライターを続けているみかこさんは、20年以上前から英国の南端ブライトンという街で暮らしている。一緒にいるのは大型ダンプの運転手であるアイルランド人の夫。彼らの間に生まれたのがこのエッセイの中心人物「ぼく」だ。小学校は裕福な家の子が多いカトリック校に通った彼だが、中学では悪ガキが多い元・底辺中学(少しは改善された)を選び通うことになる。彼が目で見て、感じてこの中学を選んだ経緯もおもしろいのだがそれはぜひ本書を読んでもらいたい。

 

 英国は多民族国家である。そのために彼の周りでもいろいろな問題が浮上してくる。階級社会であることも大きい。移民問題、EU離脱問題など国自体も揺らいでいる。人種差別発言を繰り返す友人、東洋人として受ける差別、住む場所による差別と貧富の差、彼自身のアイデンティティの悩み、「あらゆる分断と対立が深刻化している」この国で「ぼく」は生きている。

 

  しかし、この母にしてこの子なのだろうか。まだ11歳(英国では11歳から中学生になる)なのに彼はとてもクレバーで、直面する問題にもしっかりと向き合い、自分なりの考えで行動している。そこがとてもとても素晴らしい。彼の言葉に心を打たれ、彼の行動に驚き、彼の悩みに共感する。だが、この本で語られている諸々は決してみかこさんと「ぼく」だけの問題ではない。なぜなら、僕たち読者はいろいろな場面で自分のことや日本のことに置き換えながら読むことになるからだ。環境は違う、それでもここで語られているのは世界の人々に共通することで、「ぼく」の真摯な行動は読む人々の救いになり、解決の糸口にさえなるのだ。すげぇぜ、「ぼく」!!

 

 このエッセイは新潮社のPR誌「波」に連載されていたもので、今でもまだ続いている。「ぼく」はこれから、どんな問題に対峙することになるのだろう?そして、この少年は将来どんな青年に育っていくのだろう?続編がとても楽しみだ。

DATA◆ブレイディみかこ「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」(新潮社)1350円(税別)

 

◯勝手に帯コピー(僕が考えた帯のコピーです)

 

それは「ぼく」の問題で

この国の問題で世界の問題だ。

 

2019.9.26  プロ野球も優勝チームが決まりましたね。ラグビーも楽しいな。読書は川上弘美「某」を読み始めたところ。

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