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【書評】川上弘美「某」-名前も年齢も性別も分からない「誰でもない者」はいったいどこに向かうのだろう?

 人間が書いているのだから最終的には人間のことを書いているのに違いないのだけど、どこかでそう言うことではないのでないかと思ったりする。そこが川上弘美の物語のおもしろさであり、不思議さでもある。

 

 冒頭、ある病院を訪れた「わたし」は名前も年齢も性別も自分では分からず、今までの記憶もまったくない。担当医師は「そういう者が時々いると、聞いたことがある」と言い、治療の一環として人間になりすまして暮らすことを勧める。「わたし」が最初に擬態したのは女子高校生で次は男子高校生、男にも女にも老人にも子供にも変わることができるようだ。

 

  マリという女性になった時、彼女はなにを思ったか病院から抜け出し、一人で生きることを選択する。そのうち自分たちが「誰でもない者」と呼ばれていることを知り、同じような仲間とも出会うことになる。仮の名前はありながらも「某」として生きていた最初の頃は、その心の中は空っぽだった。しかし、しだいしだいではあるけれど、自我が生まれ、人を思い、死を思い、愛を感じるようになっていく。

 

 こう書いてしまうと「あるような物語」に思えてしまうかもしれないが、川上弘美のプロセスとアプローチは唯一無二のものだ。0歳のひかりが成長していく様子を描いた最終章がなんとも素晴らしい。
DATA◆川上弘美「某 」(幻冬社)1600円(税別)

 

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 ◯勝手に帯コピー(僕が考えた帯のコピーです)

 

もしかするとあなたはまだ

「某」なのかもしれない。

 

2019.10.31  文化放送のラジオコンペは今日で終わり。もう少しがんばってみる、読書は小野不由美の十二国記シリーズ「白銀の墟 玄の月 第一巻」。ブランクなど感じるはずもない。
 

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