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【書評】宮部みゆき「さよならの儀式」-宮部みゆきらしさが溢れる8つの物語からなるSF短編集

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 8つの物語を収録した宮部みゆきのSF短編集。ご存知のように彼女は多彩なジャンルに挑戦している作家だが、SFでも「蒲生邸事件」「龍は眠る」「クロスファイア」などの傑作がある。「蒲生邸事件」では日本SF大賞も受賞しているが、それは彼女の仕事のメインストリームではない。しかしこの「さよならの儀式」では、かなり真っ向からSFに向き合っているような気がした。しかも、多彩なスタイルでテーマも様々。僕は話題作は読んだりもするけれどSF読みではないのでどれも新鮮でなかなかよかった。

 

 個人的に一番好きなのはラストの「保安官の明日」だ。ザ・タウンという小さな町の話だが途中から「前の周回」だとか「総停止」だとか奇妙な言葉がいろいろと出て来て、これはどういう「世界」の話なのかと興味が深まっていく。しだいに明らかになるその世界の真実。それは確かにSFワールドではあるけれど、主人公である保安官の過去の過ちと悔恨、だからこそその世界で生きていくという決断には読む者の感情を強く揺さぶるものがある。

 

  長年暮らしてきたロボットとの最後の別れを描いた表題作、虐待された親子を救済する「マザー法」によって離れ離れになった娘とその母の物語「母の法律」、監視カメラの大きな秘密に気づいた孤独な老人の覚醒を描く「戦闘員」など日常と地続きの話も多い。それはやはり人間というものを常にど真ん中において描いてきた宮部みゆきワールド、SFでもそのことになんの変わりもないのだ。

 DATA◆宮部みゆき「さよならの儀式」(河出書房新社)1600円(税別)

 

◯勝手に帯コピー(僕が考えた帯のコピーです)

  

宮部みゆきワールドが

SFワールドを侵略した。

 

 

◯宮部みゆきの他の本の書評と情報はこちらから

 

2020.5.13  なんだか暑いぞ。台風も発生したらしい。読書は川上未映子「すべて真夜中の恋人たち」が終わったところ。

 

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