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【エッセイ/書評】燃え殻「すべて忘れてしまうから」-鮮烈な小説デビューを飾った燃え殻のエッセイ集!これもどこかであの小説につながっている

すべて忘れてしまうから

燃え殻 扶桑社 2020年07月27日頃
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by ヨメレバ

  燃え殻の初めての小説「ボクたちはみんな大人になれなかった」を読んだ後、その書評の最初に「ううむ、不思議だなぁ。特にスタイルが新しいわけでもなく、内容が奇抜なわけでもない。それなのに強烈に心惹かれるのだ」と書いた。この「すべて忘れてしまうから」は「週刊SPA!」に連載されたものをまとめたエッセイ集なのだが、やはり同じようなテイストで同じような気持ちになった。

 

 話は少しだけズレるが僕は自己啓発本の類を読まない。このエッセイを読む人もそういう本は決して手に取らないだろう、と思う。燃え殻という人、子供の頃はいじめにあい、お腹が弱く頻尿で、エクレアの詰め込みが天職だと言われ、美人からマルチ商法に誘われ、集中力が5分と続かず、イヤだと思いながらも満員電車に乗り続け、美術制作会社に勤めがながらこんなエッセイや小説を書いている。彼もまたそういう本とは無縁に違いない。

 

  ここで書かれている様々な思い出や出来事はあくまで個人的なものだ。些細である意味どーでもいいような事なのかもしれないが、その一つ一つが、その一部が、あるいはその全体が、僕らの琴線に触れ、不思議な化学反応を起こす。せつなく、悲しく、寂しい思い出の数々。それは僕らが自分自身の心の奥底にあるレンタルボックスの中にしまい込み、そのままにしておいた気持ちの「一部」なのだ。僕たちはいずれにしても、すべてを忘れてしまうのかもしれない。でも、それが蘇ることで大切なことに気がつくことだってあるのだ。

 

  あまり上手に生きることができず、なんだかいつも疲れていて、逃げ出したいところから逃げ出せない。そんな人々のためのエッセイたち。長尾賢一郎のイラストが不思議な効果を出している。
DATA◆燃え殻「すべて忘れてしまうから」(扶桑社)1500円(税別)

 

◯勝手に帯コピー(僕が考えた帯のコピーです)

すべて忘れてしまうことだから

少しだけ思い出しておきたい。

 

◯燃え殻「ボクたちはみんな大人になれなかった」の書評はこちら

 

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