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【書評】馳星周「少年と犬」-今年度上半期直木賞受賞作!その犬は人との出会いを繰り返しながら、どこか遠くをめざしていた

 

 今年上半期の直木賞受賞作。これはもう文句なしの傑作だ。作者は犬好きで「ソウルメイト」など犬と人との関係を描いた小説をすでに書いている。本来は暗黒小説の書き手で、この作品にもところどころでそれを感じる。そのことがただの動物小説とは一線を画す大きな要因になっている。

 

 物語は「男と犬」「泥棒と犬」「夫婦と犬」「娼婦と犬」「老人と犬」「少年と犬」の7つの章からなる。あれ?短編なのか、と一瞬思ったが、登場する犬は同じ。その犬を主人公にした連作短編集だ。犬は多聞といい、シェパードと和犬の雑種。この犬のキャラがいい。賢く、優しく、誇り高い。人間の言っていることもよく理解する。読み進めていくうちに僕らは多聞が大好きになっている。

 

 最初の舞台はあの大震災から半年後の仙台。男がコンビニの前で犬と出会う。各話でこのように人との出会いがあり別れがある。人間たちはこの犬がいつも同じ方向を眺めていることに気がつき、ただの迷い犬ではなく、どこか遠くをめざしているのではないかと思う。そう、これは家族に戻るため、1人の少年と再会する旅を続けている犬の話なのだ。

 

 それぞれの人と犬とのストーリーがいい。人間たちは犯罪者だったり娼婦だったり、不幸で孤独でどこか死の匂いがする。そんな人間たちに多聞は寄り添い、彼らの話に静かに耳を傾ける。神様からの贈り物、人間たちはいつか多聞のことをそう呼んだりもするのだ。

 

 出会いと別れを繰り返し、多聞は最終目的地にたどり着く。そこで起こる奇跡!そして、その後に…。最後はもう涙なしでは読めない。しかし、ラストで作者が伝えようとするメッセージは確実に読み手に届く。そのメッセージが人を救い、僕らは犬という動物をさらにさらに好きになるのだ。 DATA◆馳星周「少年と犬」(文藝春秋)1600円(税別)

  
 ◯勝手に帯コピー(僕が考えた帯のコピーです)

犬は神様が使わしたものだ。

人というこの愚かな種のために。

 

◯馳星周「ソウルメイト」の僕の書評こちらです

 

2020.10.14   東京、なんだかまた天気が悪いなぁ。曇りと雨ばかり!読書は宇佐見りん「推し、燃ゆ」。

 

 

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