坂本さんの「ぼくはいしころ」がとてもよかったので他の絵本も読んでみたいと思い手に取った。「ぼくはいしころ」は2020年に出ているが、これは2017年。それ以前、2013年に私家版で出版されている。いずれにしてもこれは「ぼくはいしころ」へとつながっていく物語。その原点と言ってもいい話だ。
ひどくお腹が減って風邪もこじらせ、暗い場所でじっとうずくまっているしかなかった冬の冷たい雨の日、猫は「2つの手」と出会う。鼻のぶち模様やだみ声、1本だけ折れた歯などなど猫の特徴を説明しているページが何いい。
ごはんたべて
ねて
うんちして
くり返し
そこでの毎日はとても退屈だったけれど
こわい外の世界に戻るのはもうまっぴらだった
猫は退屈を手に入れた。病気になっても引越ししてもそこにはちゃんと退屈があった。突然黒くて小さな2匹が現れて退屈の邪魔をしたけれど、いつの間にかまた…。そして…。
またまた後半では泣きそうになってしまうのだけど。あぁ、きっと「そこ」でもそうだよね。きっとそうだと思う!ポエティックな文章と紙版画の手法で作られたモノクロームの猫の絵がとてもいい。最後に「幻の猫」というあとがきにかえた文章がついている。絵本になった猫との出会いを描いた一文。「私は知りたかった。猫が幸せかどうかを」という言葉に強く心を打たれた。
◆DATA 坂本千明「退屈をあげる」(青土社)1300円(税別)
◯勝手に帯コピー(僕が考えた帯のコピーです)
退屈は、きっと幸せだ。
◯「ぼくはいしころ」の感想はこちら!
◯坂本千明さん、ブログがあります!
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