先日、ドゥマゴ文学賞を絵本で初めて受賞した堀川理万子さんの「海のアトリエ」。ドゥマゴって絵本でもいいんだなぁ。間口が広くていいなぁ。絵本好きとしてはうれしい。選考委員は江國香織さん。
おばあちゃんの部屋にかかっている古い絵、「おばあちゃん、この子はだれ?」、孫にあたる女の子は聞いてみる。それはおばあちゃん自身で、そこから彼女の回想が始まるのだ。
「そのころ、あたしは、ちょっといろいろ、いやなことがあって、学校にいけなくなっててね。(後略)」
これは少女の頃のおばあちゃんと女性の画家の物語だ。夏休みになっても家に閉じこもっていた彼女は母親の知人の絵描きさんに誘われて海のそばに建つアトリエに遊びに行く。
堀川さんは絵本作家、イラストレーターもやっているが元々は画家なのでその絵は表現が深い。絵を見ているだけで様々な思いが膨らんでくる。個人的には2度出てくる海の場面が好きだ。砂浜の薄い茶色、岩場のグレー、背後にある樹々の緑、深く濃い海の色と薄く淡い空と雲。泳ぐ少女とその姿を岩場に腰掛け目で追う絵描きさんを斜め上から俯瞰で描いた見開きのページ、二人並んで岩場で海を見つめる見開きのページ。どちらもいい。
2人は一緒に絵を描いたり美味しい料理を食べたり、本を読んだり、不思議な体操をしたり、車で近くの美術館に行ったり。そんな暮らしを通して心を閉ざしていた少女が解放されていくプロセスがいい。それは絵描きさんの影響でもあり、少し違った日常や海の見える自然のおかげでもある。人は人との出会いによって変わっていく。余計な言葉なんていらない。その人の日常、その人の生き方、その人の笑顔を見ることができればそれでいい。これはそんなお話。 ◆DATA 堀川理万子「海のアトリエ」(偕成社)1400円(税別)
それは学校に行けなくなった
少女にとって特別な夏でした。
2021.9.23 そうか今日は祝日か。シルバーウィーク??読書はアイリーン・M・ペパーバーグ「アレックスとわたし」 が終わったところ。