エゴン・シーレの展覧会は1991年に開催されたBunkamuraザ・ミュージアムのも見ている。その時の印象が強くて今回もぜひ見たいと思ったのだが、なんとあれから32年も経っているんだなぁ。ビックリ!今回は上野の東京都美術館で開催されている。
世紀末のオーストリア・ウィーンに生まれ、28年でこの世を去った夭折の画家エゴン・シーレ。その短かい人生の中で絵を描いていたのはわずか10年余りだ。副題には「ウィーンが生んだ若き天才」とある。この展覧会では年代順、テーマごとに彼の作品を紹介していてとても分かりやすい。同時に彼に大きな影響を与えたクリムトをはじめとする同時代のウィーン世紀末の画家たち、コロマン・モーザー、リヒャルト・ゲルストル(「半裸の自画像」は必見!)、オスカー・ココシュカなどの作品も紹介されていてそれらもまた見応えがあった。
それにしてもエゴン・シーレよ!1世紀以上も前の絵がこんなにモダンでまったく古びていないのに驚く。もしかすると、生き難いと感じる人が増えている現代の方が彼の絵は共感する人が多いのではないだろうか。エゴン・シーレの絵には常に生と死がある。自らを見つめ続け描き続けている若者の魂がある。それを支えているのが天才的ともいえる表現力だ。特に肉体の表現!赤、青、緑などを使って身体の濃淡を表情豊かに写し出していく力はシーレならでは。そして、デッサン風の絵で特に感じられる線の美しさと巧みさ。これはもう天性のものというしかない。
16歳の時に描いたクリムトやジャポニズムに影響された「装飾的な背景の前に置かれた様式化された花」を見ればその早熟な才能は隠しようもない。自画像はどれも見応えがあり様々な表現がされていて見飽きないが展覧会のメイン・ビジュアルにもなっている「ほおずきの実のある自画像」は白眉だ。あと「モルダウ河畔のクルマウ」に代表される暗く寂しい風景画が画家の内面を見るようで強く引きつけられた。
エゴン・シーレ、この画家の絵を見られる機会は現地にでも行かなければそれほど多くないのではないか。会期はあと2週間余り。興味が湧いた人はぜひぜひ!
*日時指定予約制ですが当日券もあるみたいです。詳しくはツイッター @schiele2023jp を 。また、夜間開室日が増えました。今後は3/31(金)・4/1(土)・7(金)・8(土) ■開室時間:~20:00 ※入室は30分前まで。ツイッター
◆DATA 東京都美術館「レオポルド美術館 エゴン・シーレ展」