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【絵本/感想】保坂和志作・小沢さかえ絵「チャーちゃん」-混沌から立ちあがってくる、作者の愛猫へ強い思い!

 保坂和志の小説「ハレルヤ」を紹介したばかりだが、彼が文章を書いた絵本があるのを知って早速手に取った。チャーちゃんは「ハレルヤ」にも登場する4歳と4ヵ月ほどで死んでしまった保坂さんの飼い猫だ。その死に対する彼の悲しみは深く、なかなか忘れることが出来なかった。

 

 さて、そんなチャーちゃんが主人公のこの絵本。とにかく最初の3つの見開きでもっていかれてしまう。「ぼく、チャーちゃん。」「はっきり言って、いま死んでます。」「てか、踊ってます。」。いやいやいや、すごいなぁ。まいっちゃうなぁ。最高ではないか!文章もいいけれど、小沢さかえさんの絵も素晴らしい。表紙のチャーちゃんはたまらなく愛らしいけれど、中の絵は幻想的だったり、リリカルだったり、思いっきりはじけていたり。その自在さが物語を支えている。小沢さん、絵本の人ではなくアーティストで、なかなかすごい絵を描いてる。

 

  絵本にもいろいろあるけれど、テーマがハッキリしていて予定調和的に物語が進んでいくのが一番つまらない。もっと混沌でいいし、もっと自由でいい。「チャーちゃん」はその混沌の中から作者の思いが立ちあがってくる。それは愛猫への強い思い。そして、死ぬことも生きることも一緒!いつでも彼らはそこにいる!という大きなテーマ。

 

 この物語を通して保坂さんは自らを浄化させようとしている。すべてを受け入れ、再び自由を手に入れようとするのだ。何度も何度も手に取り、味わいたい一冊!

DATA ◆保坂和志作・小沢さかえ絵「チャーちゃん」(福音館書店)1400円(税別)

 

◯小沢さかえさんの絵はこちらで見られます

◯「ハレルヤ」の僕の書評はこちら


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